遺言書は、遺産の分配を自分の意思で決める重要な書類です。
中でも自筆証書遺言は手軽に作成できるため、多くの方が選択しています。
本記事では、自筆証書遺言の
【作成手順・必要書類・メリット・デメリット・注意点・相続、遺贈、贈与の違い】の
5つのポイントに分けてわかりやすく説明します。
出来る限りわかりやすく書きますが、わからない言葉や理解が難しい文言があればお気軽にお問い合わせください。
①自筆証書遺言の作成手順
全文を自筆で書く
自筆証書遺言は、その名の通り全文を自筆で書かなければなりません。
パソコンで作成したり、他人に書かせたりすると無効になります。(*財産目録はパソコン可能)
日付を書く
遺言書には、作成した日付を明記する必要があります。
日付が曖昧だと、無効になる可能性があります。(例:令和6年5月吉日←「吉日」は無効原因)
例えば「令和4年5月21日」のように具体的に記載しましょう。
署名と押印
作成者の署名と押印が必要です。
印鑑は実印である必要はなく、認印でも問題ありませんが、
実印を使用すると信頼性が高まります。
財産の明細を書く
相続財産を具体的に記載します。
不動産の場合は住所や登記簿の情報を、預金口座の場合は銀行名や口座番号を明記します。
相続人の名前と配分を明記
誰に何を相続させるかを明確に書きます。
全ての相続人の名前と、それぞれに相続させる財産の詳細を記載することが重要です。
②必要書類
遺言書の本文
自筆で作成した遺言書そのもの。
本人確認書類
身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)。
不動産の登記簿謄本
不動産を遺贈する場合に必要。(オンライン申請できます)
預貯金通帳のコピー
預貯金を遺贈する場合に必要。
③自筆証書遺言のメリットとデメリット
メリット
手軽さ
①の内容さえ守れば法律の知識がなくても簡単に作成でき、費用もかからないため、
多くの人にとって利用しやすい方法です。
秘密性
遺言書を自分で保管できるため、内容を他人に知られることなく作成できます。
いつでも作成・修正が可能
思い立ったときにすぐ作成でき、変更したいときにも簡単に修正ができます。
デメリット
紛失や偽造のリスク
自分で保管するため、紛失や他人に破棄されるリスクがあります。
また、偽造される危険もあります。
無効のリスク
法的要件を満たしていない場合、遺言書が無効になる可能性があります。
例えば、日付が不明確だったり、署名や押印が欠けていたりする場合です。
④注意点と具体例
注意点
注意1)財産の記載は具体的に
「不動産をAに相続させる」ではなく、
「東京都新宿区○○町1-2-3の土地をAに相続させる」と具体的に記載します。
相続人が複数名の場合はそれぞれに対し具体的に記載します。
注意2)全ての財産を漏れなく記載
遺言書に記載されていない財産は、法定相続分に従って分配されるため、全ての財産を漏れなく記載しましょう。
注意3)法定相続人の遺留分に配慮
法定相続人には遺留分という最低限の相続権があり、それを侵害する遺言は無効になる可能性があります。
例えば、全財産を特定の一人に遺贈する場合、他の相続人の遺留分を侵害しないように配慮が必要です。
具体例と間違った書き方の結果
不動産の相続
正しい例:
「私は、東京都古宿区○○町1-2-3所在の土地および建物を、長男Aに相続させる。」
間違った例:
「私は、東京都古宿区○○町1-2-3所在の土地および建物を、長男Aに遺贈する。」
→ 法定相続人である長男Aには「相続」させるべきで、「遺贈」という表現を用いると誤解を招きます。
預貯金の相続
正しい例:
「私は、八菱USJ銀行古宿支店の普通預金口座(口座番号123456789)にある預貯金の全額を、次男Bに相続させる。」
間違った例:
「私は、八菱USJ銀行古宿支店の普通預金口座(口座番号123456789)にある預貯金の全額を、次男Bに贈与する。」
→ 生前贈与を意味することになり、遺言の趣旨が失われます。
特定の財産の遺贈
正しい例:
「私は、私の所有する絵画(作者:山田茶太郎)を友人Cに遺贈する。」
間違った例:
「私は、私の所有する絵画(作者:山田茶太郎)を友人Cに相続させる。」
→ 友人Cは法定相続人ではないため、「相続」ではなく「遺贈」を用いるべきです。
⑤相続、遺贈、贈与の違いと内容の変化
相続・遺贈・贈与
相続
相続とは、被相続人が死亡した時点で、その財産が法定相続人に自動的に移転することを指します。
法定相続人とは、配偶者、子供、親、兄弟姉妹など、法律で定められた人々です。
遺贈
遺贈とは、遺言によって特定の財産を特定の人(または法人)に与えることです。
相続と異なり、法定相続人以外の人にも財産を遺贈することができます。
贈与
贈与とは、生前に自分の財産を他人に与えることです。
贈与契約が成立した時点で、財産の所有権が移転します。
相続や遺贈とは異なり、贈与は生前に行われるものです。
遺言書の書き方による内容の変化
遺言書の記載内容によって、相続、遺贈、贈与の結果が大きく変わることがあります。
例えば、同じ財産を誰にどのように渡すかによって、法的な取り扱いが異なります。
相続の具体例
遺言書に「長男Aに全財産を相続させる」と記載した場合
長男Aが全ての財産を取得することになりますが、
他の相続人(例えば次男Bや配偶者C)が遺留分を主張することができます。
遺贈の具体例
遺言書に「友人Dに不動産を遺贈する」と記載した場合
友人Dがその不動産を取得します。
ただし、相続人の遺留分に配慮が必要です。
贈与の具体例
生前贈与で「次男Bに1000万円を贈与する」と契約した場合
その時点で次男Bが1000万円を取得しますが、
相続時にその分が考慮されることがあります。
最後に
自筆証書遺言は、手軽に作成できるため非常に便利ですが、法的要件を満たさないと無効になるリスクもあります。
また、相続、遺贈、贈与の違いを理解し、適切な内容を記載することが重要です。
遺言書作成に際しては、法律専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
遺言書の作成は、後々のトラブルを避けるための重要な手続きです。
しっかりと準備し、適切に作成することで、自分の意思を確実に伝えることができます。
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